2011.08.03
謎の(?)カーグラフィック腕章(写真追加)
「屋根裏部屋から出てきた。これ、あげるよ」
あるOBの方から、この腕章を頂きました。
フエルト生地を丁寧に切り抜いて縫い付けたかなり立派な作り。
聞けば60年代に使われていたものだそうです。
普通なら「すごい」とか「懐かしい」とか、
そのあたりが順当な反応なのでしょうが、私の第一印象は、
「これ、何に使ったんだろう」でした。
サーキットやその他取材現場では、
こういった自作の腕章は本来は何の役にも立ちません。
当然ながら主催者から発行されたパス以外はほぼ意味がないのは、
古今東西、共通のはずです。
謎は深まるばかりなので、第一期編集部員の菊池さんに聞いてみたところ、
どうやら何かの必要があったとか、効力があったとか、そういったものではなく、
名刺代わりだったようです。
忙しく動き回り、精神的にも余裕がなくなっているメカニックさんたちに、
「あの、すいません、こういう者ですが、写真撮ってもいいですか?」なんて、
いちいち名刺交換などできません。
この腕章をしていると、
「撮ってもいいですか?」(ちらっとこちらの腕章を見る)
……という瞬間のやりとりだけで済むこともあったそうです。
しかしまあ、60年代と言えば創刊間もない頃。
「我々はカーグラフィックである!」と、
志に燃えた若者たちの気持ちが、
これを作らせたという側面もあるかもしれません。
これって吉田匠さんのものだったということですか?
と聞いたら「時代を考えるともっと前だから、違うよね」。
60年代のCGに登場する、吉田晋康さんの方だろうという。
菊池さんによれば、いまCGに連載している日本のスポーツカー探訪史用に
写真探しをしている途中で、この腕章をした編集部員が、
カメラを持った姿で写り込んでいる例もよく見かけるそうです。
例えば…、
1966年の東京モーターショー。
左隅ギリギリに立っている人物が吉田さんだそうですから、
菊池さんいわく「この腕章そのものじゃないかなあ」とのこと。
ちなみに、右で二眼レフを持って歩いているのは、若き日の菊池さんです。
腕章をして写真奥でカメラを構えているのは我らが“高島先生”、
手前は、愛用のゼンザ・ブロニカを三脚にセットしている畑野カメラマンです。
さて話題は変わって、今回の腕章とは関係ないですが、このホッチキス。
私が入社したときにあてがわれた机の引き出しに、
なぜか残っていたものなのですが、よく見ると「ささめ」とシールが貼ってあります。
80年代からの読者のみなさんならよくご存知の笹目二朗さんです。
これを見つけた当時、もう笹目さんは編集部をお辞めになっていましたが、
私は「おお、つまりこれは笹目さんの机だったというわけか」と感慨深く思いました。
ということで、このホッチキス、今でもずっと使っております。
完成した原稿を編集長に提出するときを始め、
会社で文書を留めるときは何でもこれ1本……というより、
入社以来、ホッチキスはこれしか持っていません。
笹目さん、残していかれたホッチキス、受け継いで使わせて頂いてます(笑
photo:CG
カメラ:Canon EOS 60D + EF70-200mm F4L IS USM + EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS
(CGテストグループ)